“アラートを95%削減して、現場がここまで変わった”──業務負荷と心労を同時に軽減した改善事例 ~現場発の運用改革~

2025/10/10
村山竜人

お話を伺った方
・業種:大手SIer
・対象システム:大手金融系システム(決済系)
・役割:大規模決済システムの運用統括リーダおよび運用リーダーのお二方

【概要:導入前の課題と導入効果まとめ】

統合運用監視において、毎日大量のアラート対応に追われ、夜間・休日を問わず電話連絡が頻発していました。現場の負担は限界に達していた状況です。

XonOpsの導入により、アラートの自動フィルタリングとナレッジ活用が進み、手作業工数は大幅に削減されました。電話発報の最適化により、精神的負担も軽減され、より健全な運用体制が実現しています。

第1章:導入前の課題と影響

■ 課題:電話対応と手作業による非効率な運用

アラート発生時の対応は電話と手作業が中心であり、保守へのエスカレーションは電話連絡が基本でした。担当者が不在の場合は繰り返し電話をかけ続ける必要があり、対応稼働が非常に多くなっていました。

アラート発生後には、運用引継ぎ資料や静観対応依頼の連絡票の有無を確認する作業も加わり、電話対応にかかる時間と手間が膨大でした。また、対処方法が決まっていないアラートも多く、保守に連絡するだけの非生産的な対応が常態化していました。

保守側も改善に向けた動きが乏しく、運用側の負担が一方的に増していた状況です。

■ 影響:業務負荷と精神的ストレスの増加

夜間や休日の電話対応は、受ける側にとって精神的な負担が大きく、快く応じられる雰囲気ではありませんでした。電話をかける側も気を遣う場面が多く、エラーメッセージを口頭で読み上げ、保守が一文字ずつ書き起こすという非効率なやり取りが続いていました。

実際には「静観で良いと連絡票を出しているだろ!」と高圧的な対応をされることもあり、夜間対応に対する心労がメンバーに蓄積していました。

複数システムに影響がある場合は、準備電話や不要な対応も含めて一つひとつ確認する必要があり、人的リソースが逼迫していました。こうした状況の中で、エスカレーション対象のアラートが自動化されたことで、対応の輻輳は徐々に緩和されていきました。

第2章:プロジェクト実施と初期対応

■プロジェクトの進行と工夫

本プロジェクトは、保守部門が主導し、運用現場の課題を解決するための改善施策として立ち上げられました。開発と運用の両面からアプローチし、顧客ニーズに即した解決策をタイムリーに提供することを目的に進行しました。プロセスの透明性を確保しながら、段階的に導入が進められました。

運用側では、受け入れに向けた調整を各システムと個別に実施しました。移行日程の一括管理が難しい中、システムをグルーピングし、順次移行することで混乱を防ぎました。初期導入時には、保守部門が積極的にナレッジ登録を行ってくれたこともあり、大きな混乱は発生せず、スムーズな立ち上げが実現しました。

■ 初期の課題と対応策

導入初期には、電話対応の自動化や運用・保守間の役割分担に関する調整が必要でした。自動架電で不出が発生した場合の対応や、運用側での検知・再架電のフローなど、細かな運用設計が求められました。

また、ナレッジの起案・承認プロセスについても、保守が起案し、運用が承認するというルールを明確化しました。運用が見る資料と保守側の視点に差分が生じないよう、運用目線での調整や修正を加えることで、現場での混乱を防ぎました。

保守のみで対処を考えると対応に困るケースもあるため、運用の目を通すプロセスを設計に組み込んだことは、実運用上の大きな工夫となりました。

■ 導入時のトラブルと改善

導入初期(試行運用の段階)では、システムの不安定な動きが見られました。
この状況を受けて、運用部門も積極的にXonOpsに対して改善を求めたことで、製品側の対応が進み、現在では遅延や停止は発生しておらず、安定した運用が実現されています。

また、オペレーター目線ではインターフェースが大きく変わったため、「何を見て、どう対応するか」の訓練を徹底しました。維持連絡の自動化によって、これまで苦労していた作業が緩和され、統制部門からも非常に高い評価を得ています。

導入試行のタイミングでは、従来の監視システムからの変更に対する不安もあり、「本当に大丈夫か?」という声もありましたが、徐々に評判が高まり、現在ではメイン監視業務に欠かせない存在として定着しています。

第3章:導入後の効果・成果

■ 業務負荷の軽減と対応品質の向上

XonOpsの導入により、夜間・休日の電話対応が大幅に削減され、オペレーターの精神的負担が軽減されました。従来は、保守へのエスカレーションのためだけに電話をかけるケースが多く、非生産的な対応が常態化していましたが、現在では自動化された対応が可能となり、電話連絡作業からの解放が実現しています。

対応の効率化により、人的リソースの再配分が進み、より重要な業務に集中できる体制が整いました。

■ 定量的な成果

保守対処アラート件数の削減
 週あたり9,850件 → 468件へと、約95%の削減を実現しました。

・オペレーター稼働の削減
 インシデント初期対応や架電作業の自動化により、月あたり約5人月分の作業を削減しました。

・精神的負担の軽減
 夜間・休日対応における心労が緩和され、現場メンバーの働き方にも好影響を与えています。

第4章:今後の展望と他社へのおすすめ

■ 今後の活用方針

現在、XonOpsでは外部から受信したメールの件名をもとにナレッジを引き当てる仕組みを構築しており、引き当て条件の設定によってさらなる自動化を進めています。

今後は、他事業部との連携を通じて、保守対応に関する設計情報のナレッジ化を推進し、AIによる一次判断の支援など、より高度な活用にも取り組んでいく予定です。

まだ実用化には至っていない部分もありますが、ナレッジの整備と自動化の拡張によって、運用の質とスピードをさらに高めていけると期待しています。

■ 他社へのおすすめポイント

当センターでは、他事業部やお客様の見学を受け入れる機会も多く、XonOpsの導入状況や少人数での運用体制について「効率的に回している」との評価をいただいています。

アラート件数の削減がその効率化に大きく寄与しており、保守エスカレーションが多い現場や、ナレッジ化が進んでいない組織にとっては、特に導入効果が期待できると考えています。

自動化による業務負荷の軽減だけでなく、運用の標準化や属人性の排除にもつながるため、改善を検討されている企業にはぜひ導入をおすすめしたいツールです。


インタビュアー後期

本事例は、電話連絡と手作業に依存していた統合運用監視の現場において、XonOpsの導入によって業務負荷と精神的ストレスを大幅に軽減した成功事例です。

保守主導で始まった改善プロジェクトは、運用現場との丁寧な調整を経て、段階的かつ着実に定着しました。導入当初は不安の声もありましたが、保守・運用双方の連携によって改善が進み、現在では安定した運用が実現されています。

特に、夜間・休日の電話対応からの解放は、現場メンバーの働き方に大きな変化をもたらしました。「新しい仕組みへの不安」から始まった取り組みが、今では「なくてはならない存在」へと変化し、チーム全体のモチベーション向上にもつながっています。

今後は、ナレッジのさらなる活用やAI連携による高度化も視野に入れており、XonOpsは単なるツールにとどまらず、運用の未来を支える基盤として進化を続けています。